グリーフサポートを学ぶ
お坊さんたち
死別にともなう苦悩に寄り添うために
そっか…それだけ大切な存在ってことだよね。そんな存在が居なくなってしまったんだもん。生きる気力がなくなっちゃうのも私は当然だと思いますよ。
大阪のとあるお坊さんが1周忌のご法事のさいに、ご主人を亡くしたご婦人からぽつりと今の心境を打ち明けられました。
主人が亡くなって1年経つというのに、ずっと落ち込んでて…。友達が気晴らしに遊びにいこうって誘ってくれるけど、全然そんな気になれない。なんか生きる気力がわかないんです、もう1年も経つのにね…。
そのお坊さんが返したのが冒頭の言葉。そのときに沸きおこってきた想いをそのまま口にしたそうです。
だけど、それで良かったのかなって今でも思い返すことがあるそう。もっと前向きな言葉をかけてあげた方が良かったんじゃないか。もっと仏さまの話をした方が良かったんじゃないか。
大切な人を亡くし残された方の想いを聞きながら、様々な葛藤を抱え日々お寺のつとめに励むお坊さんたちがいます。
お坊さんやお寺さんは、お葬儀や日頃の法務の中で出会うご遺族に何ができるのか。もともと持っている日本仏教のグリーフサポートの力、そして、改めて必要なあり方、知識、スキルを学べる場が、リヴオンが主催する『僧侶のためのグリーフサポート連続講座』です。
一般社団法人リヴオンは2009年に「グリーフサポートが当たり前にある社会の実現」を目指し、設立されたNPO団体。誰もがグリーフについて学べる「いのちの学校」を全国で開講するとともに、京都府の補助事業として「大切な人をなくした若者のつどいば」を開いています。元来言葉や概念がない時から、グリーフケアを担ってきた日本仏教の力を大事にしながら、僧侶らが学べる場を創出。現在、真宗大谷派における僧侶養成の教育カリキュラム開発にも携わっています。
お坊さんたち
今回グリーフサポートを学んだ15名のお坊さんたちです。連絡先やSNSを記載していますので「活動に協力してほしい」など個別にお問い合わせください。
桂 浄薫(かつら じょうくん)
善福寺|奈良県天理市
僧侶として日々いろいろな方の悲しみに出会っているにも関わらず、その対処法や対峙する態度が分からずにいました。私の中にいつの間にか出来上がってしまった「してるつもりの寄り添い」を改めるため受講しました。
自坊でグリーフケアの集いを開催します。安心してグリーフを話せる場があると知ってもらうことによって、グリーフを和らげる第一歩にしてもらえれば幸いです。私自身も皆さんのグリーフに出会い直していきたいです。
連絡先:Facebook「桂 浄薫」
霍野 廣由(つるの こうゆう)
覚円寺|福岡県築上郡
「日本のお寺は葬儀ばっかりしてダメだ」と非難されることがあります。一方で、お寺は葬送儀礼を司るなかで死別にともなう苦悩を抱える方をケアしてきたのも事実です。私はその役割を最大化させたいと思い、本講座を受講しました。
日々の月参りやご法事、お葬儀の中でよりグリーフケアを意識した形式を整えていきます。またお寺だけで行うのではなく、地域のNPOや団体の方々と協働しグリーフケアの取り組みを積極的に行っていきたいです。
連絡先:Facebook[霍野 廣由]
加賀 俊裕(かが しゅんゆう)
三津寺|大阪府大阪市
僧侶になり仏教と出会い、「苦」と向き合う先人達の知恵に触れることができました。一方で現代の知恵では喪失という「苦」にどう向き合うのか?そんな知識欲で参加させてしていただきました。
今も昔も大切にしていることは変わらないと感じ改めて目の前のことに真摯に向き合う決意ができました。お寺では、変わらない大切なことを共有し、いつか来る喪失にみんなで備えるそんな場作りができればと思います。
連絡先:Facebook[加賀 俊裕]
後藤 順(ごとう じゅん)
西勝寺|兵庫県姫路市
父・前住職を失ったグリーフに向き合いたい。心のしこりをほどき、自分の心・思いを言語化したい。そして、自分が苦しんだ経験が、ご遺族へのグリーフケアに少しでも役立てたら、という思いで受講しました。
他者のグリーフが聞ける、自分のグリーフが語れる場に私は救われました。その恩返しに、「お寺カフェ」の中に、「住職がお話聞きます」の旗を上げて、グリーフが語れる居場所をつくります。
連絡先:Facebook[西勝寺]
河野 清麿(かわの きよまろ)
遍満寺|大阪府大阪市
様々な場面に立ち会います。その都度なんとかやっているのですが、いつも「これでよかったのかなぁ?」と悩むばかりです。「どうその場にいるべきか?」そのヒントが見つかればと思い参加しました。
今回のコロナで感じました。日々の積み重ねが大切であることを。まずは菩提寺として今関わっている方々を中心に必要なときにちゃんと声をかけていただけること。そして駆けつけることができるようになりたいです。
連絡先:Facebook[河野清麿]
寺坂 和道(てらさか わどう)
慶瑞寺|大阪府高槻市
自分自身のグリーフに真向かいになるために、そして大切な仏の教えに出逢うために受講しました。
これからは、自身のグリーフをままに、相手に伝え、また相手のグリーフをままに、聴けるそんな僧侶でありたい。そんなお寺をつくっていきたいと思います。
連絡先:072-696-0733(慶瑞寺)
和田 隆恩(わだ りゅうおん)
超覚寺|広島県広島市
拙寺では「自死遺族の分かちあい」「夫を亡くした女性の分かちあい」「ペットを亡くした方の分かちあい」を開いていて、いろいろな相談も随時受けていますが、独善的になっていないか見直ししようと受講しました。
グリーフケアは、仏教には元々含まれていた考え方「無畏施」であり、何も目新しいアプローチではありません。そこを意識して、自信を持って仏教(法施・自利利他円満・摂取不捨・御同朋御同行)を実践していきたいと思います。
連絡先:WEBページ[超覚寺]
諏訪 至孝(すわ しこう)
慶昌院|京都府向日市
僧侶として、人として出会うたくさんの悲しみに対して無力感を覚えていたため、この講座を受講しました。
相談しやすい、居心地の良い、安心できるお寺を目指します。これまで以上に分かち合うことを意識した仏事を行い、分かち合いの会も開きたい。また、他団体、組織、行政などとの連携も考えています。
連絡先:Facebook[諏訪至孝]
藤本 照美(ふじもと てるみ)
誓福寺|兵庫県姫路市
お寺の僧侶として坊守として大切な人を亡くされた方の悲しみにどう向き合うべきか、又、自身の抱えるグリーフとどのように付き合っていけばよいのかを学びたいと思いました。
今回の受講でお寺の法要や儀式、月参りがグリーフケアに繋がっていることを確認出来たので、引き続き丁寧に勤めさせていただくと同時に、今回学んだことを生かして、これからお寺でのグリーフケアの集いなども計画してきいたいと思います。
中杉 隆法(なかすぎ たかのり)
西林寺|兵庫県神戸市
阪神淡路大震災の被災によってたくさんのことを失った経験が今度はそのことによってたくさんの出会いがあった。失うということがあったからこそ本当に大切なものが見えてくるのではないか、そんな思いで受講しました。
丁寧に丁寧に目の前のひとりの人と向き合い、ともに悲しみ、ともに喜び、ともに教えを聞きあいながらグリーフを通してつながっていきたいです。
連絡先:Facebook[中杉隆法]
杉本 豊子(すぎもと とよこ)
最光寺|兵庫県伊丹市
身近な人を亡くした方々に出会った経験からこの講座を受講させていただきました。
グリーフを抱える人に真に寄り添えるのは、きっと阿弥陀様なのだろうと思います。共に阿弥陀様のお慈悲に耳を傾けることの出来る関係づくりと場づくりをしていきたいと思います。
髙島 正哲(たかしま しょてつ)
雲松寺|兵庫県姫路市
2歳のお子さんを突然に亡くされた檀家さんとの関わり合いの中で、僧侶としてそのご両親のためにお役に立てたのか、何ができたのか全く自信がなかった。多くの死別と喪失に関わっていく中でグリーフケアを学ぶことが一つの手立てだと感じ、受講しました。
我々が住む世の中にはありとあらゆるグリーフが存在します。死別はその代表的なものですが、死別だけに限らず、其々のグリーフを共有し、お寺でそこに集う人同士ピアサポートができる仕組みづくりと取り組みを勧めていきたいと思っています。
岩田 尚登(いわた なおと)
満福寺|兵庫県神戸市
読経と型通りの法話で供養をこなしているのみ、遺族とどう対話して良いのか分からず悩んでいました。グリーフについて学ぶことで、「大切な人を亡くす悲しみ」という経験のないことに向き合う勇気が必要でした。
時宗伝統の踊り念仏には、グリーフケアの力が宿っていると信じています。ただ読経を聞くだけでなく、唱える・踊る・祈るなど参列する人それぞれが好きな形で表現し、繋がることが出来る供養の場を創作することを目指しています。
連絡先:Facebook[岩田尚登]
東口 真由美(ひがしぐち まゆみ)
隨専寺|京都府京都市
お寺の住職になって17年。大切な方を亡くしたご家族と関わる中で、「何もできないなぁ」「言葉がみつからないなぁ」と思い惑う日々。何か少しでも手がかりを…との思いで受講しました。
「ただ語る」「ただ聞く」ジャッジのない空間。 一人ひとりが安心してつどえる、温もりのある居場所を丁寧に紡げたらと思います。
ファシリテーター
尾角 光美(おかく てるみ)
一般社団法人リヴオン 代表理事
国際比較社会政策学 修士
2003年19歳で母を自殺で、2012年に兄を不慮の死でなくす。2009年リヴオンを設立。母の日プロジェクト、遺児支援の活動、自治体、僧侶、学校などを対象とした、講座や研修などを行ってきた。2016年日本財団の国際フェローに選ばれ英国ヨーク大学に進学。国際比較政策学修士号。
これまで、僧侶のためのグリーフケア連続講座は、名古屋で2016年にはじまり、東京、北海道、静岡と70名近い僧侶や寺族の方に学んでいただきました。ただ、学びで終わりではなく、一人ひとりの現場で向き合う姿勢や、お寺での取り組みなど、蒔いた種が芽吹くとき、花咲くとき、実るときを目にすると本当に嬉しく思います。その際にある、ご遺族やグリーフを抱えている人たちが、自分なりに喪失を大事にしていけるように。今回の東京、関西、福岡クラスのみんなの芽吹きを心からたのしみにしています。
五藤 広海(ごとう ひろみ)
一般社団法人リヴオン ファシリテーター
浄土真宗本願寺派 横超山光蓮寺 副住職
1986年岐阜県生まれ。高校卒業後、自分を表現できない苦しさからお寺を飛び出して、東京で3年間音楽活動をしていたが、祖母の認知症をきっかけにお寺に戻った。2007年から2年間京都にある浄土真宗本願寺派の中央仏教学院にて学び、卒業後、生家である「光蓮寺」に勤める。リヴオンのファシリテーター養成講座期間に離婚を経験し、学びの中で自分の気持ちと向き合い、表現できる場の大切さを実感した。講座修了後、2016年からいのちの学校や、講座でファシリテーターを務める。「自分を表現してもいいんだ、本当は」と感じられるような場を一緒につくっていきます。
日々、"ご遺族"という名前の人間はどこにもいないことに気づき、また、言い換えれば、私自身もその"ご遺族"の一人だったと知らされています。そこには誰にでも効くような万能薬はない。そんな当たり前を見失わないようにすれば、ケアする側とかされる側とかではなく、一緒に「歩いていける道」を一緒に探していけるんだと思っています。「今、生きにくいあなたと生きる」それがお坊さんじゃないかな。って思っています。
特別講師
酒井 義一(さかい よしかず)
存明寺 住職
東京にある真宗大谷派・存明寺住職。12年前より、自坊で「グリーフケアのつどい」を3ヶ月に1度、開催している。第四講では「模擬グリーフケアのつどい」を行い、いかにお寺を死別の支えとして、生きた人のために開いていくのかを学ばせてもらう。
2020年9月に行われた模擬グリーフケアの雰囲気が忘れられません。模擬なのに真剣(ガチ)だったからです。それぞれの歩みの中で出会ったその人のこと、そのことから感じている今の思いを、一人ひとりが自分の言葉で語る時が流れました。そんな私たちを包み込むように曲が流れました。
あなたは今も 心(ここ)にいるから
声も 温もりも 優しい微笑みも
心(ここ)にいるから 逢いたい
(ゆず『逢いたい』)
別れてしまった人と直接出会うことはできませんが、その人と出会い直すということは、私たちにできることなのではないでしょうか。それがグリーフケアの動きの、いのちなのだと思います。
その人と出会い直す歩みを、それぞれがそれぞれの場で創造していくこと。そのことに真剣に向き合う時、それが今です。心こめて、歩んでいきましょう。
渡邉 元浄(わたなべ げんじょう)
正蓮寺 住職
静岡にある真宗大谷派・正蓮寺住職。21歳で自死により父を亡くし、22歳で住職継承。悲しみに向き合えなかった苦しみを種に、リヴオンの同連続講座を受講。2016年よりグリーフケアのつどい伊豆を主宰。儀礼のチカラを信じ、枕経、通夜、七日参り、年忌等にグリーフケアの要素を多く取り入れている。講義で模擬枕経法要を実施。檀家の7割がお寺葬。
先日、法名を決めるために、みんなで、こたつを囲みながら、テレビのリモコンを(トーキングスティック代わりに)まわして、亡き方のことを聞いていきました。だんだんと、語る気持ちが出てきて、変わっていく瞬間があって。場の安全性をたもって、場をつくるとこんなにも亡き人への思いが、あらわれてくるんだと。みんながだんだん主人公がその人になっていくから、ぜひ、今回の受講生のみなさんに、そういう時間をたくさんつくっていってほしいなと願っています。
大河内 大博(おおこうち だいはく)
願生寺 住職
大阪にある浄土宗・願生寺住職。2001年より病床訪問、2006年より遺族支援を開始。市立川西病院緩和ケア病棟臨床スピリチュアルケア・カウンセラー、上智大学グリーフケア研究所主任研究員を経て、この春から訪問看護ステーション「さっとさんが願生寺」を設立。著書に『今、この身で生きる』。
常々、自身に問いかける先人の言葉があります。それは精神科医・小此木啓吾の言葉で、彼は死別の痛みを和らげる一つの方法は、「良い聞き手」に語ることであるといい、宗教者は、その「良い聞き手」としての天職であると述べるのです。
「良い聞き手」がどのような聞き手であるかは、とても語り尽くせるものではありませんが、私は僧侶として、その天職であるがごとく自覚を持ち得ているか。お檀家さんにとって「良い聞き手」で足り得えているのか。檀家さんの悲嘆に向き合うたび、自身の在り方を反省する日々ですが、転職しない限り、天職なのかもしれません。
皆様のこの講座での学びが、そんな自身の在り方を問う言葉を持つ機会となり、そして、その言葉を語る仲間を得た場となってくれていると信じます。
お寺から
つながる
グリーフ
サポート
【僧侶のためのグリーフサポート連続講座2020 in 関西】を修了したお坊さんたちが学んだこと、そしてこれからのビジョンを発表し、共有する場「お寺からつながるグリーフケア」を開催します。関西近郊でグリーフサポートに想いを持った人たちが出会い、つながり、これからの力になっていけばと願っています。
--------------------▶日付:2020年11月24日(火)
▶時間:18:00-20:30
▶場所:聞法会館|オンライン
▶プログラム:
オリエンテーション
学習発表
ダイアログ
ゲストスピーチ
クロージング
▶ゲスト:
黒川雅代子さん(関西遺族会ネットワーク)
坂下裕子さん(こども遺族の会「小さないのち」代表)
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どうか、この場のご縁が、あなたのこれまでとこれからにそっと寄り添えますように。
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